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4月20日 「第1根滝丸」救出 

 重茂漁協の定置網は、4月の終わりに網入れし年明けの1月まで行われます。定置網が休みの間は、船や網を修理し次の漁に備えます。今回の大津波はこの休みの間にあたり、引き上げていた網に被害はありませんでした。しかし、メンテナンスのため山田町や釜石市のドックに入れていた船は大きな被害を受けました。漂流していたもの、陸上に乗り上げたものを除き半数を失ってしまいました。海上での回収は曳航することができ比較的簡単ですが、陸上に乗り上げてしまった船は技術と多額の費用を要します。しかし、造船所が津波で破壊された今は、残った船を使うしか手立てがありません。重茂漁協は、「漁業からの離脱者を出さないために、1日も早く漁を再開する」として、対策を講じてきました。陸に上がった船の救出のためには、日本に8台しかない500トンのクレーン車をいち早く確保しました。(因みにその費用1日500万円ということ)。そのクレーン車を使って18日から5日間の日程で2艘の移動作業を開始しましたのでその報告を致します。

根滝丸の救出①根滝丸の救出②根滝丸の救出③

根滝丸の救出④根滝丸の救出⑤根滝丸の貼り紙

 前日から準備し、2日目(19日)は「第1根滝丸」の救出です。根滝丸は漁協が所有する船の中で一番大きく、「重茂味まつり」ではたくさんの人を乗せて重茂半島を案内してくれる重茂の象徴的存在です。3月11日、根滝丸は山田町のドックに保管されていました。津波で海から約200メートル先の国道45線のすぐそばまで流され、辛うじて留まっていました。今回の津波であちことに乗り上がった船は見かけますが、これくらい大型のものは見当たりません。そして、船体が大きく傾くことなく真っ直ぐ立っていたことは驚きです。

 作業は、根滝丸に横付けした巨大クレーン車、それを補助するクレーン車やトラックが並び本当に大掛かりです。工程は大きく分けて (1)船を吊る (2)特殊なトラックに乗せる (3)運ぶ、という3つです。その3つが終了するまで何と9時間を要しました。みぞれ交じりの冷たい雨の中、船がバランスを崩さぬよう1センチ、1ミリの単位まで細心の注意を払いながら作業は慎重に行われました。家財道具が入ったままの家を、何一つ動かさぬように引越しさせるような感じです。今後の定置網漁のカギを握る根滝丸ですから、定置の乗組員、漁協職員、皆でその無事を祈りながら作業の一つひとつを見守りました。8時間以上もかけてやっと船をトラックに乗せました。船を積んだトラックは、人が歩くぐらいのゆっくりした速度でドックまで移動しました。道路は地震で路肩が崩れており、巨大な船を積んだトラックには危険があります。タイヤが浮いたりつぶれそうになったり、最後までハラハラしました。無事にドックに到着した時には、一同が安堵し「良かった。」との言葉があちこちで聞かれました。漁協の職員が「進水式の時には、一緒に乗りましょう。」「おいしい魚を届けますからね。」と声をかけてくれました。その顔は本当に嬉しそうでした。根滝丸が無事ドックに入ったことは、定置網の再開が近いことを意味します。当初の予定より定置網の再開が早まるのではないかと期待しています。岩手単協は重茂漁協と「重茂パック」を取り組んできました。「その日に水揚げされたお任せパック」です。三陸産の魚が店頭から消えた今、多くの組合員に呼びかけて重茂パック再開を待ちます。

 今日(20日)からは、根滝丸をトラックから下す作業と、もう1艘の陸に乗り上げた「第3与奈丸」の移動が行われます。無事に作業が終了することを祈っています。

  (((熊谷 由紀子 

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