5月21日の重茂と高徳
天然ワカメの収穫はじまる!!
大木敏正
重茂が震災後はじめて生産活動を再開しました。天然ワカメの収穫です。
これは「天然ワカメ」として商品化することはもちろんの事、もう一つの重大な目的は「メカブ」の採取です。これを「養殖ワカメの種」として使うからです。
5/21(土)にこの漁が口開けされ、予想以上の品質と収穫量であったと聞きました。あの全てを飲み込んだ大きな津波にも海底の根は耐えてくれました。海が大きく動いたので、生育は良いだろう・・・、と話していた通り、品質がいいワカメが収穫できたようです。大きな犠牲がなければ手放しで喜ぶのだけど複雑な心境です。
でも、震災後初めての生産活動です。「海の人たちは海の上にいなくちゃ・・・」と話す伊藤組合長の言葉通り、次に向かって動き始めた事に、痛いほどの拍手をしたいです。
(5/22の「岩手日報」朝刊記事をこのあとアップします)
対照的な石巻
同じ5/21の高橋徳治商店本社の目の前では、大掛かりな遺体捜査が行われています。50人ほどの警察官が道路の脇に積み上げられた瓦礫を掘り起こし、人が埋まっていないかの確認です。異様に感じるほどの腐敗臭を和らげるマスク(?)を装てんし、重機とスコップを使っての遺体捜索です。道路の反対側の工場ではヘドロを出しながら、目の前での遺体捜索は、2ヶ月を経ても大きな進展がない現実を実感します。
本当に石巻の瓦礫撤去は遅れています。これは石巻に限った事ではありませんが、石巻は特に遅れています。本社工場の周辺では、被害にあった部分の片付けをやった家。何も手付かずでそのままの家。片付けた家からは遺体は出てこないでしょうが、手付かずの家からはこれからも出てくるでしょう。あの工場周辺からいったい何体の遺体が出てくるのか想像すらできません。本当に早く瓦礫を撤去し、遺体を安置することが政治に求められています。もう既に2ヶ月という時間が経ったのです。何も手付かずの家は、その持ち主に何かの異変があるからです。それを行うのは行政であり政治の責任です。日々、被災地と向き合うとき感じるのは、この国の政治の貧困であり無責任さです。
そして臭いのきつさがどんどん激しくなってきています。高橋徳治商店の冷凍庫・冷蔵庫は3ヶ所ありますがいまだ手付かずです。近隣の冷凍庫も処理済みと手付かずに分かれます。石巻には多くの冷凍庫と冷蔵庫があり、そこに保管されている魚などは膨大です。これの撤去と選別は魚関係の職を失った人たちが、日当1万円で従事しています。無収入になった人たちへの政府の対策もありますが、ここから離脱する人が急増しています。その仕事のきつさに耐えられないし、たかだか1万円では「やってられない・・・」のが実情です。既に人間の限界臭覚を遥かに超えたものがあるそうです。しかし誰かがやらなくてはいけない。福島とは別次元ですが、誰かがやらなくてはいけない事には変わりません。石巻の業界で処理の順番を決めましたが、高橋徳治商店は最後のようです。私たちは真っ黒になってもヘドロには立ち向かいますが、この魚処理だけはご勘弁です。我がままで無責任な支援のあり方だとはわかっていますが・・・。